中小企業診断士 中小企業経営・政策の勉強方法|白書と施策を効率的に攻略するコツ

1. 中小企業経営・政策とは?

中小企業経営・政策は、一次試験7科目の中で 中小企業診断士として最も独自性のある科目です。

「中小企業白書」と言って、中小企業庁が毎年国会に提出している年次報告書で、国内の中小企業の現状や課題、政策の方向性を体系的にまとめたものです。正式名称は「中小企業白書 及び 小規模企業白書」 と言います。

内容は、売上・利益・雇用・金融などの最新の統計データや時事テーマにあった対応、政策の評価や事例などを紹介している内容です。

ちなみに2024年の中小企業白書の原文はこちら⇨https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/PDF/chusho.html?utm_source=chatgpt.com

要約した記事も書いてるのでもしよければ覗いていってください。

中小企業白書、よく白書と呼ばれる内容に基づく経営動向と、「中小企業施策」に関する制度を学ぶのがこの学問の特徴です。

暗記要素が強いですが、出題範囲は明確に絞られており、繰り返し学習で得点源にできる科目です。

内容は大きく2つの分野に分かれています。

  • 中小企業経営(白書):経営動向、企業数・従業員数の推移、課題分析
  • 中小企業政策:施策の体系、金融支援、税制優遇、組織再編、経営支援施策

✅ 1.中小企業経営(白書)

「中小企業白書」から出題される領域。

統計データや経営課題を中心に出題されますが、暗記よりもトレンドの理解が重要です。多くが去年の「中小企業白書」の出題内容を聞かれるので2026年受験生は2025年の白書を学習するのがいいです。

例年、4月の下旬ごろに「中小企業白書」は公開されます。なのでこう言った自治問題系は5月ごろから始めると良いです。

主な学習内容

内容としては覚えることが多い上に、直近1年の時事問題が出てくる非常にトリッキーな科目です。合格者の多くは定番統計(中小企業の割合、小規模企業の比率)など暗記で賄える科目で点数を稼ぎ、過去問の中でも傾向問題で稼いでいくパターンが合格ライン6割に達する必要条件です。

中小企業診断士の合格ラインや主な勉強方法についてはこちらの記事で解説してます。

  • 企業数の推移
    • 中小企業の割合:約99.7%(ほぼ全企業)
    • 小規模企業の割合:約85%前後
  • 従業員数の分布
    • 中小企業が約7割を雇用
  • 経営課題
    • 人材不足、高齢化、事業承継問題
    • デジタル化・グローバル化への対応

👉 ポイント

得点のイメージは

暗記必須部分:6〜7問(24〜28点)

傾向把握部分:5〜7問(20〜28点)

一般常識で解ける問題:2〜3問(8〜12点)

合計:16〜18問正解(64〜72点) 合格圏内

白書対策に時間をかけすぎずに、『得点しやすい暗記問題を落とさない』ことが合格への道です。

✅ 2.中小企業政策

診断士試験のメインテーマ。制度や施策をどれだけ覚えたかが得点を左右します。特に『制度の枠組み』については優先して覚え、細かい暗記は二次試験対策でゆっくり定着させていくのがイメージです。最新の施策に関しては傾向を押さえて細かい補助金名称は捨てても大丈夫です。

本場の診断士の人も細かい補助金内容は随時、要項を見て調べながら申請の手伝いをしていきます。なので実務に向けた学習方法をするとより現場に出た時にうまく活用できます。

主な学習内容

中小企業政策とは、国や自治体が 中小企業や小規模事業者を支援するために設けている制度や仕組み のことです。
診断士試験では、この政策の内容を幅広く問われます。具体的には 法律・金融・税制・補助金・支援機関 などが中心テーマです。

  • 中小企業基本法
    • 中小企業の定義(資本金・従業員数)
  • 金融支援
    • 政策金融機関(日本政策金融公庫)
    • 信用保証協会による保証制度
  • 税制・組織再編
    • 中小企業投資促進税制
    • 事業承継税制
  • 経営支援施策
    • 経営革新計画
    • ものづくり補助金
    • IT導入補助金

👉 ポイント

得点のイメージは

制度基本(法律・定義・支援機関):6問(24点)

金融・税制・補助金:6問(24点)

その他(一般常識+ラッキー問題):3問(12点)
👉 合計:15問前後=60点超


2. 試験の特徴と出題傾向

  • 出題数:20問(40点分)
  • 合格ライン:全体で60点(100点満点中)
  • 出題形式:白書(統計・傾向)+政策(施策の制度)

近年の傾向

  • 白書:企業数・雇用・課題に関する問題(約30%)
  • 政策:金融支援・補助金・事業承継に関する問題(約70%)
  • 「施策の正確な知識」を問う問題が中心

中小企業診断士試験の「中小企業経営・政策」は、一次試験と二次試験で役割が大きく異なります。
一次試験では独立した科目として出題されるのに対し、二次試験では直接出題されることはありませんが、事例問題を解く上での背景知識として非常に重要になります。

まず一次試験の特徴です。
「中小企業経営」分野では、毎年発行される中小企業白書・小規模企業白書を基に、中小企業の現状や課題に関する統計や動向が出題されます。企業数や従業者数、付加価値の割合、雇用の特徴(女性・高齢者・非正規雇用の比率など)、さらには人手不足や事業承継、DX導入といった経営課題が中心テーマです。ここでは細かい数字を丸暗記する必要はなく、「前年より増加傾向か減少傾向か」といった方向性や、白書で強調されているテーマを押さえることが合格の近道です。

一方の「中小企業政策」分野では、法律や制度そのものを理解しておく必要があります。中小企業基本法による中小企業の定義、政策を実行する支援機関(中小機構、商工会議所、信用保証協会など)、中小企業金融(日本政策金融公庫、商工中金など)、さらに補助金や税制優遇策が出題の中心です。試験では「誰が、何を、どのように支援しているのか」という制度の仕組みを理解することが大切で、細かい金額よりも目的や対象をしっかり覚えることが得点に直結します。

📌挿絵 選択問題の解答をしてるフリー素材

次に二次試験の特徴です。
二次試験では「中小企業経営・政策」という科目そのものは存在しません。しかし、事例ⅠからⅣの設問を解く上で、中小企業が直面している課題や利用可能な支援制度を理解しているかどうかが、解答の説得力を左右します。たとえば事例Ⅰ(組織・人事)では人手不足や事業承継問題、事例Ⅱ(マーケティング)では販路開拓や地域密着型の施策、事例Ⅲ(生産・オペレーション)では生産性向上やDX支援、事例Ⅳ(財務・会計)では政策金融や信用保証制度の知識が間接的に解答に役立ちます。

つまり一次試験は「知識を覚えて点を取る科目」、二次試験は「その知識を背景に活用する科目」と位置づけられます。受験生は一次試験で身につけた知識を単なる暗記に終わらせず、二次試験での助言や提案の裏付けとして活かせるよう意識して学習すると効果的です。

📍挿絵 人が写っていて全体で試験を受けてるフリー画像

📌 挿絵ポイント:「出題比率の円グラフ(白書3割・政策7割)」


3. 効率的な勉強方法

(1)中小企業経営(白書)

白書分野では、統計データや経営動向の理解を問う問題が出題されます。

特徴は「細かい数字の暗記」よりも「全体の割合や傾向」を押さえているかを確認する形式が多い点です。

たとえば以下のような問題が出されます。

一次試験例題

中小企業数に関する記述として正しいものはどれか。

A. 日本における中小企業の割合は、全企業の約70%である。

B. 小規模企業は中小企業の約半分を占める。

C. 中小企業は全企業の約99%を占める。

D. 大企業は全企業の約30%を占める。

👉 正解:C

ここでは「中小企業の割合=ほぼすべて(約99%)」という大きな傾向を把握していれば解けます。


(2)中小企業政策

政策分野では、施策や制度の仕組みを正確に理解しているかが問われます。

特に「対象」「目的」「効果」のどれかを問う問題が多く、正誤問題形式が中心です。

たとえば次のような出題があります。

一次試験例題

中小企業基本法に関する記述として正しいものはどれか。

A. 中小企業の定義はすべて「資本金5億円以下」である。

B. 卸売業の中小企業の定義は「資本金1億円以下または従業員100人以下」である。

C. 小売業の中小企業の定義は「資本金5000万円以下または従業員100人以下」である。

D. 製造業の中小企業の定義は「資本金5000万円以下または従業員50人以下」である。

👉 正解:C

中小企業の定義は業種によって異なるため、「資本金基準と従業員数基準」を正確に暗記していないと間違えやすい問題です。


(3)二次試験とのつながり(政策活用)

さらに、二次試験の事例問題では「実際に施策をどう活用するか」を問われることがあります。

これは一次試験の政策知識を実務に落とし込む練習になっています。

二次試験例題(事例Ⅰイメージ)

後継者不足に悩む製造業D社は、事業承継に課題を抱えている。

中小企業政策を活用し、どのような施策を利用できるか、80字以内で述べよ。

👉 解答例:

事業承継税制を活用し、後継者が株式や資産を引き継ぐ際の税負担を軽減することで、円滑な承継を実現する。


4. 学習スケジュールの立て方

合格者平均を参考にすると:

合格者平均
インプット時間15時間白書と政策の要点整理
演習時間10時間過去問・模試演習
過去問活用5年分以上2〜3周

さらに、ここから単元ごとの時間配分でいくと

単元インプット時間数内容
中小企業の定義・数値3時間中小企業の割合(企業数・従業員数・付加価値)
/小規模事業者の定義
企業動向4時間製造業、小売業、サービス業などの特徴
雇用人材3時間高齢化、女性・非正規労働者、後継者問題
経営課題(時事トピック)5時間人手不足、DX、海外展開、事業承継など
中小企業基本法3時間基本理念と政策の方向性/資本金・従業員数鵜の基準
支援機関4時間役割・活動内容・対象者の違い
金融支援6時間日本政策金融公庫、商工中金
/信用保証協会と信用保険制度の仕組み
補助金・助成金5時間小規模事業者持続化補助金
/ものづくり補助金、IT導入補助金、事業承継補助金
税制・投資支援3時間中小企業投資促進税制、研究開発税制など
創業・ベンチャー支援2.5時間SBIR制度、ベンチャーファンド、起業支援策

👉 暗記中心の科目なので、短期集中で繰り返す方が効率的。直前期の1〜2週間で一気に仕上げる戦略も有効。

📌 挿絵ポイント:「学習フロー図(インプット→施策暗記→過去問反復)」


5. 失敗しやすいポイントと対策

1. 白書の数字を細かく暗記しようとする

中小企業白書は膨大なデータで構成されており、企業数や雇用者数、付加価値割合など、細かい数字を丸暗記しようとすると時間ばかりかかってしまいます。しかも、試験では「正確な数値」よりも「全体の割合」や「増加・減少の傾向」が問われることが多いのが実情です。
👉 対策:数字は「約〇割」といった大まかな水準や「前年より増加/減少」といった傾向を押さえることに集中しましょう。細かい数値は出題頻度が低いため、学習効率を考えれば捨てても問題ありません。


2. 政策の暗記があいまい

中小企業政策では、支援機関や金融制度、補助金の内容など覚えることが多く、丸暗記に頼ると混乱しやすい分野です。特に「どの機関が」「誰を対象に」「どんな目的で」支援するのかがごちゃ混ぜになってしまうケースが目立ちます。
👉 対策:「目的・内容・対象」の3点をセットで表に整理し、繰り返し見直すのが効果的です。たとえば、信用保証協会なら「目的=中小企業の資金調達支援」「内容=保証人として金融機関からの借入を後押し」「対象=資金繰りに悩む中小企業」といった形で覚えれば、記憶が整理されて実戦で応用できるようになります。


3. 最新施策をチェックしない

中小企業政策は毎年アップデートされるため、「過去の知識だけ」で対応しようとすると最新の施策に対応できない危険があります。特に近年はDX推進や事業承継支援、スタートアップ支援といった新しいテーマが強調されており、直前期に確認しておかないと取りこぼしにつながります。
👉 対策:試験直前に必ずテキストの最新版や中小企業庁の公式サイトを確認し、直近で注目されている施策や支援策を押さえておきましょう。これにより、時事的な問題にも対応でき、得点の底上げにつながります。


6. まとめ

中小企✅ まとめ|初心者が押さえるべき中小企業経営・政策の勉強法

中小企業経営・政策は、診断士一次試験の中でも「暗記要素が強い科目」です。膨大な数字や制度が出てくるため、初心者の多くが「全部覚えよう」として挫折してしまいます。しかし、合格に必要なのは 満点ではなく6割(60点)。つまり “覚えるべきところだけ押さえる” 勉強法が合格への最短ルートです。

初心者は、以下のポイントに沿って学習を進めればOKです。

  1. 白書は細かい数字を追わない
    → 「割合(おおよそ〇割)」と「増加・減少の傾向」だけを覚える
  2. 政策は「目的・内容・対象」で整理
    → どの制度が、誰を支援し、どんな効果を狙っているのかを表でまとめる
  3. 最新施策は試験直前に確認
    → DX支援、事業承継、スタートアップ支援など、その年に強調されるテーマは最後に押さえる

勉強ステップは3つ

  1. テキストをざっくり読み、全体像をつかむ(5時間)
    • 「白書=傾向」「政策=仕組み」と役割を区別する
  2. 頻出テーマを暗記(20〜25時間)
    • 白書の主要データ
    • 政策の基本法・金融制度・支援機関・補助金
  3. 過去問で出題パターンを確認(20時間)
    • 問われ方に慣れて“頻出論点”を体で覚える
  4. 直前期に最新施策を確認(1〜2時間)
    • 中小企業庁サイトや予備校まとめをチェック

✨ これを実行すれば、初心者でも効率よく学習が進み、十分に6割超えが狙えます。
中小企業経営・政策は “暗記科目”ではなく“割り切り科目”。無理に全部覚えるのではなく、出やすいところに集中して得点源にしましょう

よくある質問(Q&A)

Q1. 白書の数字は細かく覚える必要がありますか?

A. 細かい数字の丸暗記は不要です。試験では「前年より増加/減少」「大企業と中小企業の割合」といった傾向や相対的な比較が問われやすいため、方向性とおおよその割合を押さえれば十分です。


Q2. 中小企業政策は暗記だけで対応できますか?

A. 単なる暗記では混乱しやすいため、**「目的・内容・対象」**を整理して理解するのが効果的です。たとえば「信用保証協会=中小企業の資金調達を保証する」といった具合に、制度の仕組みをストーリーで覚えると忘れにくくなります。


Q3. 毎年最新の白書を確認する必要がありますか?

A. はい。中小企業白書は毎年春に更新され、一次試験では前年版の白書内容が出題されます。古い白書の数字を覚えてしまうと混乱のもとになるので、必ず最新のテキストや要約版で勉強しましょう。


Q4. 勉強時間はどのくらいを見積もればいいですか?

A. 一般的には 35〜45時間のインプット+同じくらいのアウトプット演習 が目安です。暗記科目なのでダラダラやるよりも、短期集中で一気に仕上げる方が定着しやすいです。


Q5. 中小企業政策の細かい補助金や助成金も覚えるべきですか?

A. 金額や条件などの細部は毎年変わるため、深追いは不要です。
試験では「どのような目的の制度なのか」が出題されるので、趣旨と対象者を理解することに集中しましょう。

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